お問い合わせに関するご協力とお願い
当店ではより迅速な対応のため実行中の業務を最優先とさせて頂いております。
お急ぎの場合もございますでしょうがお問い合わせは商品掲載ページ毎に設置のお問合せボタンよりメールにて頂けますようご理解とご協力をお願い致します。 株式会社日工(プロショップ工具魂)

人工知能!すごいぞ!Watson!すごいぞ!人間!

NHKニュースより
「死を覚悟しました」。白血病を患った60代の女性が入院当時を振り返った言葉です。
抗がん剤を投与しても、思うように回復せず原因も不明。死の危険も迫る中、女性の命を救ったのは、なんと2000万件もの医学論文を学習した「人工知能」でした。
わずか10分で、専門の医師でも診断が難しい特殊な白血病であることを見抜き、治療法を変えるよう提案したのです。その結果、女性は回復して無事退院。専門家は「人工知能が人の命を救った国内初のケースではないか」と指摘します。
さまざまな分野に可能性を広げる人工知能。医療の世界を今後どのように変えていこうとしているのでしょうか。
科学文化部の出口拓実記者が解説します。

人工知能 医学論文を学ぶ
人工知能をがん治療に活用しようと研究を進めるのは、東京大学医科学研究所の附属病院やアメリカの大手IT企業IBMなどのグループです。
導入したのは、IBMが手がける人工知能を備えたコンピューターシステム「ワトソン」。5年前にアメリカの人気クイズ番組「Jeopardy!」で、人間のクイズチャンピオンに勝利し、一躍注目を集めました。
グループでは去年7月から共同研究を開始。2000万件もの研究論文や1500万件を超える薬などの特許情報、さらにすでにわかっているがんと関連する遺伝子の情報などを「ワトソン」に学習させ、診断が極めて難しく、治療法も多岐にわたる白血病などのがん患者の診断に役立てる臨床研究を進めています。
しかし、研究を始めた当初はどこまで活用できるかわからず、現場の医師たちは半信半疑でした。

人工知能が治療法の変更を提案
ところが、ワトソンはそんな疑問を払拭(ふっしょく)する活躍を見せます。この研究に参加した患者の山下あや子さん(66)は、去年1月に附属病院に入院し、医師からは「急性骨髄性白血病」と告げられていました。
2種類の抗がん剤を組み合わせる標準的な治療を受けましたが、体の免疫機能を担う白血球の数は思うように回復しませんでした。抗がん剤が効くはずなのに症状は悪化。40度近い高熱や意識障害、それに肺炎も発症しました。
なぜ抗がん剤が効かないのか、その原因がはっきりしません。このままでは、免疫不全による敗血症などで死亡するおそれも出ていました。
そこで病院は、人工知能にその原因を探らせることにしました。
まず山下さんの遺伝情報を調べ、白血病の原因となっている可能性のある遺伝子の変化をピックアップ。1500ほどにまで絞り込んだ山下さんの遺伝子の変化を人工知能に読み込ませ、原因を分析させたのです。
すると、わずか10分後。山下さんが苦しんでいる病気は、当初、医師が診断していた「急性骨髄性白血病」ではなく「STAG2」と呼ばれる遺伝子の変化が根本の原因を作り出している「二次性白血病」だという判断を示しました。
病院はこの判断を参考に治療方針を変更。
抗がん剤の種類を変えたところ、山下さんは徐々に回復していったのです。入院から8か月後、山下さんは、無事退院できるまでに回復しました。
山下さんは「あと1年ほどすれば、この世からいなくなると覚悟した時期もありました。ロボットやコンピューターの研究は成果を上げるのに年数を要するもので、こんなに急激に役に立つなんて思いもよらず、今こうして元気でいられるのは人工知能のおかげです」と話していました。

これまでに人工知能は、山下さんだけでなく、専門の医師でも診断が難しかった患者2人についても特殊な白血病だと見抜くなど、合わせて41人について、治療や診断に役立つ情報を提供したということです。
人工知能学会の会長で国立情報学研究所の山田誠二教授は「人工知能が人の命を救った国内初のケースと言ってもいい」と指摘しています。

人工知能はなぜ見抜けたのか?
日本トップレベルの専門医師が行っても見抜くのが難しかった「二次性白血病」。なぜ人工知能は見抜くことができたのでしょうか。
実は現在、二次性白血病のような遺伝子の変化が複雑に絡み合って起きる特殊な血液のがんの診断は、複数の医師が遺伝情報のデータと医学論文を突き合わせながら行っています。
しかし、がんの発症に関係する遺伝子の変化は数も多く、一方でその変化がもたらす影響について調べた医学論文も膨大な数あります。高度な専門性を持つ複数の医師がこれらを読み込んで、論文どうしの関連性なども考慮しながら、がんの原因にたどり着くには、うまくいっても数週間。結果的に正しい診断にたどり着けないこともあるのが実態です。
東京大学医科学研究所の宮野悟教授は「がん研究論文は、毎年20万という数が投稿されていて、1人の医師がそれを読んで調べていくということは不可能な世界になっているのが現状だ」と指摘しています。
これに対し、人工知能は、人間の使う言葉を理解できるよう、その能力は、飛躍的な向上を遂げており、2000万件という論文情報などを知識として蓄積しています。患者の遺伝子の変化の情報があれば、がんとの関連が指摘されている数多くの論文の中から関係するものを選び出してきます。さらに論文に書かれた内容を理解し、複数ある患者の遺伝子の変化が互いにどのように影響し合っているのか評価。そして、どの変化が病気を引き起こす根本となった重要なものかを突き止め、効果が期待できる抗がん剤などを提案するのです。
宮野教授は「ワトソンが行っていることは、医師が診断で行う知的活動と同じだが、その規模が人間の能力を超えたところに広がっていて、人知を超えた医療の世界に変わっていくための技術と言える」と指摘しています。

人工知能が切り開く医療の未来は?そしてその課題は
これまで救えなかった数多くの命を救えるようになる。そんな期待を抱かせる人工知能ですが、医療の世界をどのように変えていこうとしているのでしょうか。
山田教授によりますと、実は1980年代にも人工知能の医療現場での活躍が期待されたことがあったと言います。当時は「Aという症状が出たらBという病気」というように、パソコンに教え込む技術が主に使われていましたが、やはり病気の要因は複雑で、研究としては表舞台から姿を消してしまったということです。
ところが、それから30年以上がたち、コンピューターは、人が話す自然言語を理解し始め、みずから推論・学習ができるようになりました。また必要な情報を取り出す検索技術の進歩、さらに医療に必要な遺伝子解析などの周辺技術も発展しました。

山田教授は「医師と患者のやり取りを横で聞いて、人工知能がその場で助言するような、医師と人工知能が協調する時代は10年単位でなく、数年という近い将来にやってくる可能性がある」と話しています。
そうした期待の一方で、課題もあります。
人工知能の能力が今後さらに伸びていった場合、医療現場での患者の診断・治療はどこまで人工知能に任せるのか。医師との役割分担はどのようなものになるのか。そして、もし人工知能が誤診したらその場合の責任は誰が取るのか。さまざまな議論が今後出てくることも予想されます。
すでに人工知能に患者の遺伝情報を入力した結果、調べようとしていなかった別の病気まで将来患者が発症するおそれがあるということがわかってしまった、ということも起きています。人工知能と共存していくために、私たち人間の側も、責任の所在に関するルール作りや倫理指針の策定など、医療現場、ひいては社会として受け入れていくための環境整備を進めていかなければいけない段階にさしかかっているように思います。

このニュースに関心を持たれた方は是非NHKニュースをご確認ください。

しかし一番凄いのは、やはり生身の人間の絶え間ない努力に尽きるかと思います。